
理事長 安藤 聡彦
ご挨拶
ナショナル・トラストという社会運動をご存知でしょうか。市民や各種団体・企業からの寄附金によって貴重な自然環境や歴史的環境を取得し、保全していく取り組みのことです。世界で最初にこの運動に取り組んだのはイギリスで、「歴史的名勝及び自然的景勝地のためのナショナル・トラスト」が1895年に設立されています。日本でも古都鎌倉の自然環境を保全するために鎌倉風致保存協会が1964年に設立されたことを嚆矢として、北海道の斜里町や和歌山県田辺市天神崎など全国各地で同様の取り組みが進められてきました。この運動は今日では全世界に広がっており、「国際ナショナル・トラスト機構」には現在80以上の国や地域の団体が加盟しています。
19世紀以降、世界の環境は工業化や都市化によってそれまでにない危機にさらされることになりました。森が伐採され、海が埋め立てられ、由緒ある建物も次々に壊されていきました。社会の進歩は必要であるとしても、本当にこのままでよいのだろうか、そもそも人間にとって豊かさとは何であるのだろうかーーそのように考えた人々は、環境が破壊される前にそれらの環境そのものを取得し、末永く保全していこうと考え、そのための運動に取り組むことになります。それがナショナル・トラスト運動の出発点です。
埼玉県には豊かな環境が長い歴史のなかで育まれてきましたが、首都圏に位置することによってそれらの破壊の危機に早くから直面してきました。そこで、「県民が主体となって行う県内の優れた自然や貴重な歴史的環境等を保全するための活動を推進し、県民が真に愛着と誇りを持てる郷土「さいたま」づくりに寄与することを目的」として私たち公益財団法人さいたま緑のトラスト協会が1984年1月に設立されました。以来この40年のあいだに、県内外の多くのみなさまのご協力により埼玉県は14箇所のトラスト地を取得し、協会はボランティアのみなさんのお力をお借りしつつそれらの管理や普及啓発事業に取り組んできております。
多くの先達によって育まれてきた埼玉県版ナショナル・トラスト「緑のトラスト運動」をこれからも維持発展させていくことが、埼玉に暮らす私たち人間にとっても生き物たちにとってもすこぶる大切です。どうぞ様々な形でこの運動をご支援いただけますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
理事長 安藤 聡彦



