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一人の一万ポンドよりも一万人の一ポンドを大切にして、誰でもが自由に走り回れる土地を守ろう
イギリスのナショナル・トラスト
 ナショナル・トラスト(国民環境基金)活動とは、ひろく国民(地域住民)から寄付金、会費などを集めて土地や建物を買い取ったり、寄贈を受けたりして、貴重な自然や歴史的に価値のある建物などを守っていこうとする活動をいいます。
 イギリスでは、19世紀末から20世紀のはじめにかけての15年間に、全国で約20万ヘクタールの農地や山林が失われた結果、貴重な自然や歴史的建物が次々と消えていきました。これは、産業革命による都市への人口の集中による都市化の結果によるものでした。
 このような社会の変化を心配する多くの民間団体が、自然や歴史的建物の保護に取り組みました。しかし、あまり成果が上がらなかったといいます。


 三本の矢
 このような状況下でロバート・ハンター(弁護士)キャノン・ローンズリー(牧師)オクタビア・ヒル(社会事業家)の3人が中心となって、1895年に「史蹟名勝、自然的景勝地のためのナショナル・トラスト」という団体をつくりました。民間の力によって、優れた自然環境を買い取り保全することを目的とする団体でした。
 ナショナル・トラストが始めて取得した土地は、中部ウエルズ・カーディガン湾の入江を見おろす崖地、1万8200㎡で、寄贈されたものでした。
 最初に買い取った建物は、サセックス州のアルブリストンにある牧師館です。


湖水地方のグラスミヤ湖
ピーターラビットの生みの親 ビアトリクス・ポター 
 1882年に初めて16歳のビアトリクスと31歳のローンズリーは出会いました。ローンズリーは、ビアトリクスの絵の才能に強く惹かれ、絵本を出版することを勧めました。ローンズリーがリストアップした6つの出版社にあたりましたが、すべて断られ、彼女は自費で「ピーターラビットのおはなし」を200部出版しました。1901年12月に世に出たこの本は人気を呼び、翌年フレデリック・ウォーン社から出版されました。彼女は印税が入るたびに湖水地方の土地や農場を買い、自然環境を守ることに情熱を燃やしました。1944年、77歳で生涯を終えたビクトリアスは絵本の印税で取得した4000エーカーの土地をナショナル・トラストに寄贈するという内容の遺言を残しました。最愛の師、ローンズリーの創設したナショナル・トラストのために、彼女が生涯をかけて用意した贈り物になりました。
ナショナル・トラスト法

 1907年に、ナショナル・トラスト法が制定され、それまでの会社法に基づくものから、新たに法律の保証のある「信託」によるナショナル・トラストになったのです。この法律で保存の対象となる資産を「譲渡不能」と宣言する権利が与えられました。この権利は、ナショナル・トラストだけに与えられた権利で、宣言された資産は、売ったり、譲渡したりすることができません。また、抵当に入れたりすることもできないばかりか、国会での特別の合意がされない限り、公共事業のためだからといって強制収用されることもなくなりました。この「譲渡不能」の原則は、ナショナル・トラストの根幹をなす原則として、運動をすすめる上での力強い支えとなっています。戦争には決して使用してはならないという項目もあり、平和への願いが強いことを感じます。

領主館の保存計画

 イギリスの美しい領主館の多くが、重い相続税のために売りに出され、土地がばらばらに売られたり、建物が壊されるなどの状態が次つぎに起こりました。このため、ナショナル・トラストは領主館を後世に残すため「領主館保存計画」を立てたのですが、、運動の強い働きかけによって、領主館やその土地がナショナル・トラストに寄附されたときは、非課税扱いになりました。1931年のことです。
 建築的、美術的に重要な建物などの保護を明確にすると同時に、建物の中の家具や絵の保存と公開も法律の中で決められました。さらに、これらの物を維持するのに必要な、管理費を生み出すための資産を取得する権利も、ナショナル・トラストに認められました。

 このような、法律に基づいた「領主館保存計画」では、その所有者が、保存費用を生み出すための基本財産をつけて領主館を寄附したときは、相続税が非課税になるほか寄附した人やその子孫は、そのまま住んでよいことになりました。そのかわり、これらの物が本来の状態で保たれるように、一定の監督を受けます。さらに家屋を一般に公開することが義務付けられています。これは、関係者が住み続けることで、建物がもつ雰囲気が、損なわれないようにするためです。
 


教育的役割

 自分たちが出し合ったお金によって、自然や歴史的な建造物が保全され、いつでも、そこへ行って見ることができ、実感として受け止められるという満足感は、運動の推進上の大きな力となります。
 ナショナル・トラストでは、資産を大切にすることのほか、PRにも力を入れ、誰でもそこへ行って見られるように、いろいろなパンフレットを作っています。大きな写真集から手軽なリーフレットまで、各種の印刷物をつくって、見学者が一人でも多く来てくれるようにと配慮しています。ロンドンにあるナショナル・トラストのインフォメーションセンターには、これらの資料のほか、トラスト・グッズとして、ネクタイ、バッチ、カードなどを販売しています。これらの売上げは運営資金の一部に充てられています。会員は、個人会員と家族・グループ会員、ジュニア会員、終身会員、協賛者会員などで外国人も会員になれます。会員には、会員証が交付され、これを提示すれば、トラストが保全した建物などには無料で入場できます。もちろん一般の入場者からは入場料をとります。会員同士のクラブであるナショナル・トラストセンターが行う講演会、展覧会や見学会なども盛んに行われています。英国ナショナル・トラストの総裁はエリザベス皇太后で300万人もの会員で構成されています。


ネプチューン計画

 買い取り運動として有名なのが「ネプチューン計画」といわれるものです。1965年、イギリスの海岸約4800kmのうち自然が残されているのは、約1400kmでした。この海岸線を守るため、会員がお金を出し合って海岸線を買い取ろうというのが「ネプチューン計画」です。これによって1983年には約790kmの海岸線を取得しました。運動の成功のカギは、それまでの邸宅などの保存から海岸線というだれにでも関心のあるものを対象にしたことです。この計画から、環境保全のための土地の買取を進めていく方向を取るようになったのです。


公開と管理

 海岸線は、単に所有しているだけでは意味がありません。多くの人々に、自然豊かな海岸線のすばらしさを体験してもらいたい、また、このすばらしさを守るために、すすんでお金を出してもらうことが必要です。駐車場やキャンプ場が人々の利用のために設けられています。しかし、一面では利用されるようになると、逆に自然破壊につながりかねません。
 ジョン・ヘイリー(1923~1931トラスト議長)の理念「保護があれば入場はいつでもできる。しかし、保護がなければ入場は永久に不可能になる。」は、今でも不変です。年々増加する来訪者から、保全された海岸線や庭園、建物などを守るため、一定の制限があることも止むを得ないことなのです。そのために、多少の不人気になってもかまわないとの考え方が基本にあります。


参考:「ナショナル・トラストを歩く」横川節子著 千早書房
    「イギリスのナショナル・トラストを旅する」横川節子著 千早書房
    「グリーンアルファ」1号~4号さいたま緑のトラスト協会発行
写真: 湖水地方のグラスミヤ湖
    ポター家の庭・・・中央に本物のウサギが見えます
    ポター家の庭
写真提供:藤本冨美子